赤ちゃんの頭のかたち外来
赤ちゃんの頭のかたちに関する心配や疑問を解消するための専門外来へようこそ。当外来では、一人一人の赤ちゃんに合わせた丁寧な診察とアドバイスを心がけています。
「赤ちゃん頭のかたち外来」について
赤ちゃんの頭のかたち外来とは、主に新生児の頭のかたちに異常が見られる場合に相談や治療を行う外来です。当外来は滋賀県では初めて開設され、県内唯一の外来です。(2024年4月現在)
必要性は以下の点にあります。
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早期発見と早期介入
頭蓋骨の異常や頭のかたちの変形は、早期に発見し介入することで、将来的な外見上の問題を防ぐことができます。例えば、乳児の頭蓋骨はまだ柔らかく、成長に伴い形状が変化しやすいため、この時期の介入は非常に有効です。
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正しい診断と治療計画の提供
頭のかたちの異常は、多くの場合見た目の問題が主ですが、場合によっては脳への圧迫や発達に影響を及ぼす可能性があります。専門の外来では、頭蓋縫合早期癒合症など、早期に治療を必要とする疾患を診断し、必要に応じて外科手術を行える施設を紹介します。
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保護者への情報提供とサポート
保護者は子どもの頭のかたちの異常に気づいた際、不安や心配を感じることが多いです。専門外来では、状態についての正しい情報提供と共に、治療過程での心理的なサポートを行います。これにより、保護者が安心して子どもの成長を見守ることができます。
このように、頭のかたち外来は、頭のかたちの異常を早期に発見し、適切な診断と治療を行うことで、子どもの健やかな成長と発達を支援する重要な役割を果たしています。
当院では主に、形成外科専門医、小児形成外科手術指導医が診察を担当いたします。
頭のかたちの異常とは
赤ちゃんの頭の変形とは、主に次の2つの病態を指します。
これらは、赤ちゃんの頭のかたちが妊娠中や生後の圧力で変わることを指し、特に赤ちゃんが同じ方向を向いて寝る癖によって形が変形することが多いです。
アメリカでの1992年の「Back to Sleep Campaign(仰向け寝を推奨するキャンペーン)」開始後、変形性斜頭症の発生率は大幅に増加しました。それ以前は300人に1人(0.003%)でしたが、それ以降は約47%にまで増加しています。しかし、日本国内における具体的な発生率は不明です。
原因と予防
これらの原因は、子宮内での外圧、出産時の外圧、生後の外圧(向き癖)によるものと考えられています。予防のためにはまず育児習慣の見直しが必要です。
具体的には、
- 抱っこする向きを変える、授乳する手・向きを変えることで、平坦な部位の反対側を向けるようにする。
- ベッドの向きを変えたり、興味をそそるものをおいたりする。
- マットレスなどの工夫を行い、狭いところに押し込まないようにする。
などです。
診察の流れ
当院の「赤ちゃんの頭のかたち外来」は待ち時間減少のため、かかりつけ医からの予約のみの受付となっています。まずはかかりつけの先生に相談してみてください。(赤ちゃんの頭のかたち外来は、保険診療で行われます。ヘルメット治療に関しては自費診療となっています。)
外来受診後、診察(視診、触診、計測)を行います。必要に応じてレントゲン撮影やCT撮影を検討します。頭蓋縫合早期癒合症など、急ぎ手術等を要する疾患でないことが確認できれば、必要に応じて治療を開始します。
4ヶ月未満の場合は、まずは育児習慣の見直し、積極的体位変換をおすすめします。これは、タクティールケア(背中のマッサージ)や、タミータイム(腹這いで過ごす時間を作る、保護者と赤ちゃんがお腹をくっつけて遊ぶ)などを指します。5ヶ月以上で、頭の変形が強ければ、ヘルメット治療をおすすめします。
ヘルメット治療について
ヘルメット治療は、頭の平坦な部分への完全な除圧を目指し、頭蓋の左右対称な発育を促す「形状誘導療法」として位置づけられるものです。
ヘルメット治療の利点としては、完全な除圧が可能であり、赤ちゃんが平坦面にとらわれず自由な向きを向けることができる点が挙げられます。
欠点としては、開始時期が重要(生後6ヶ月くらいまで)、カスタムメイドが原則で採型が必要、自費診療(当院では約45万円程度)、1日23時間装用しなければならないことなどが挙げられます。
これらの治療方法は、変形性斜頭症および変形性短頭症の治療における基本的な考え方に基づいており、患者の状態や成長に応じて適切に選択されます。
よくある質問
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変形性斜頭症とは何ですか?
胎生期や生後の外圧によって引き起こされる頭蓋の変形で、後頭部が一方向に平らになることで非対称の頭形を生じる状態です。
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変形性短頭症とは何ですか?
頭の後ろが両側に平らになり、いわゆる「ぜっぺき頭」を形成する状態です。この変形も外圧によって生じます。
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変形性斜頭症と変形性短頭症の発生原因は何ですか?
主に胎生期や生後の外圧、特には寝る姿勢や赤ちゃんの向き癖によるものです。
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どれくらいの頻度でみられますか?また男女で発生率に違いはありますか?
男性の方が変形性斜頭症や変形性短頭症の発生率が高い傾向にあり、特に男性の右側の後頭部の平坦化が多く見られます。
アメリカでの「Back to Sleep Campaign」開始以降、変形性斜頭症の発生率が急増しました。1992年以前は300人に1人(0.003%)でしたが、キャンペーン以降は約47%にまで増加しています。日本での正確な発生率はわかっていません。
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変形性斜頭症や変形性短頭症は自然に改善しますか?
成長と共に改善する例が多いですが、一部では変形が残存することもあります。特に重症例では、変形が永続する可能性が高く、治療の必要性があると考えられます。インターネット上では、自然軽快は無いという記載もみられますが、これは誤りです。
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この状態は子どもにどのような影響を与えますか?
見た目の問題が主です。それ以外では、時にいじめやからかいの対象になること、顔面や耳介の変形、心理的影響、日常生活上の不便さ(例えばメガネや帽子のフィット不良など)が生じることがあります。インターネット上でみられる、まっすぐ走れない、斜視になる、顎変形症を来すなどの記載には科学的根拠はありません。
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治療方法にはどのようなものがありますか?
まずは育児習慣の見直しや頸背部の運動促進などの方法から行います。それでもある程度の変形が残る場合は、形状誘導ヘルメット治療をおすすめします。
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育児習慣の見直しとはどんなものですか?
具体的には、抱っこする向きを変える、授乳する手・向きを変えることで、一定の部分に圧がかからないようにします。
また、ベッドの向きを変えたり、おもちゃの位置を調整したり、マットレスなどの工夫を行ったりなどして、平坦な部位の反対側を向けるようにすることなども重要です。
狭いところに押し込まないようにすることも大事で、バギー一体型チャイルドシートや、バウンサーの長時間利用はすすめられません。
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ヘルメット治療とはどんなものですか?
ヘルメット治療は、変形性斜頭症(DP)や変形性短頭症(DB)に対する一般的な治療法であり、赤ちゃんの頭のかたちを正常化する目的で使用されます。この治療法は、特に赤ちゃんの頭が成長する最初の数か月間に効果的です。
ヘルメットは、平坦な部位への圧力を軽減し、未発達な部分に成長のスペースを提供します。これにより、頭部の成長が均等になるよう促進します。
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ヘルメット治療の効果はどのように評価されますか?
ヘルメット治療は頭部の成長に合わせて頭蓋形状を正常化させるために使用され、多くの症例で頭形の改善が見られます。
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ヘルメット治療を始める最適な時期はありますか?
ヘルメット治療の開始時期は重要で、生後6ヶ月くらいまでが一般的に推奨されます。当院では生後5ヶ月ごろに開始することをおすすめしています。
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ヘルメット治療にかかる期間はどれくらいですか?
ヘルメット治療の期間は平均で約5か月です。治療期間中、効果的な頭部形状の改善が期待できます。
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治療中に注意すべきことはありますか?
ヘルメットは1日23時間の装用が原則で、汗をかいてかぶれることがあるため、定期的な清掃と赤ちゃんの皮膚状態のチェックが必要です。
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治療の費用はどのくらいかかりますか?
ヘルメット治療は自費診療です。当院では447,700円(レーザーでの計測料、6回までの診察などを含む、2024年4月現在)となっています。
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ヘルメット治療以外に変形を改善する方法はありますか?
育児習慣の見直しや頸背部の運動促進などがあり、これらはヘルメット治療を補完する形で実施されることが多いです。ただ、頭の変形が高度な場合は、保育者が工夫をしても平らな部分を下にしてしまって改善が難しいため、ヘルメット治療の適応と考えられます。
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外来の予約を取るにはどうすれば良いですか?
赤ちゃんの頭のかたち外来の初診予約は完全予約制となっており、かかりつけ医の先生から地域医療連携室経由でしか取ることができません。まずはかかりつけ医の先生に相談してください。
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